「どこに向かってるんですか?」 ここで生きてくために必要なことと、カイルのことを知るために、場所を変えようといったグリードについてきたのだが、 まさか車に乗ってどこかへ行くとは考えていなかった。 「人目につかないところだ。変な噂が立つと、あいつも精神的にくるだろうからな」 車を運転しながら、振り向かずにグリードが言う。 助手席に乗ったリオンは口を開こうとはしない。 後部座席に座ったリサは、残してきたカイルのことが気になった。 リオンに殴られる前の、あの青い瞳の事を。 「カイルが心配か?」 突然のグリードの言葉に驚く。まるで心を読まれているような気分だった。 「ええ。色々、気になることもありますから」 何とか平静を装う。 「心配すんな。あいつのことだ、寝りゃ治る」 リサは窓の外を眺める。自分たちの部署が、遠くに小さく見えた。 やはり、何の変哲のない建物は、『棺桶』には見えなかった。
「ほい、着いたぜ」 随分と迂回しながら車を走らせること数十分、目的の場所に着いたらしい。 リサは車を降りた。 そこは、岩場だった。 街を離れ、森を抜け、着いたこの場所は、確かに人目につかない場所だった。 夏はまだ遠く、さして日も長くないため、もう日が暮れかけていた。 日が沈む方には、とても大きな山脈が見えた。 リサは思った。 あれが、世界をふたつに分けた山脈なのだろう、と。 あの向こう側では、今でも殺し合いが行われているのだろう、と。 「何ぼーっとしてんだ?」 グリードも車を降りる。 リオンは車から降りる気はないのだろう、シートを後部座席まで倒して腕枕を組んで目を閉じている。 「あの山の向こう側のことを、少し考えてました」 「…向こう側の連中は、一度は外を夢見るもんさ」 何か聞こえた気がしたリサは声の方を見たが、グリードはタバコに火をつけていただけだった。 グリードはゆっくりと煙を吐いた。 「それじゃ、始めようか。まず、ここで生きてくために必要なことを。 ちぃとばかし長くなるけど、気長聞きいてくれや」 グリードは近くの岩に腰をおろす。少し離れたところに、リサも習って腰を下ろす。 「突然だがリサ、君は以前東の方にいたんだよな?」 「それが何かこの話と関係あるんですか?」 「なるべく聞きっぱなしにならないようにしようと思ってよ。 時々質問すっけど決してふざけてるわけじゃないから、そこんとこよろしく」 彼なりの気遣いなのだろうと、リサは思った。 「…はい。以前は中東部にいました」 「中東、か…それじゃぁ、『氷人形将軍(ジェネラル・アイスドール)』って女、知ってるか?」 リサは少々考える。 「数少ない女性将軍、アリス・グレイシス中将のことですか?」 「そうそう、そいつ。で、そいつが戦ってるの見たこと、あるか?」 「『戦場を舞うことまさに冷厳なる氷の如し』でしたか。噂に聞いたことしかありませんが…」 「そうか。すまねぇ、リサ。振り出しに戻る」 がっかりしたようにため息をつくグリード。リサはなんだか悪いことをした気分になった。 「仕方ねぇ。最初からちゃんと話すか。リサ、次の質問だ。人の瞳の色って、何で決まってるかわかるか?」 「虹彩の色、ですよね」 「ご名答。で、リサ。君は見たよな?カイルの緑の瞳が青くなったのを」 リサはうなずく。もっとも、彼女には全く信じられないような出来事だったが。 「単刀直入に言おう。あれは『COLORS(カラーズ)』って呼ばれてるもんで、俗に言う超能力ってやつだ」 リサの周りには?マークが5つぐらい浮かびそうだった。そのくらい、彼女は混乱していた。 「唐突なことで混乱するのも無理はないが、落ち着いて聞いてくれ。これから話す事は、全部ホントのことだ。 もっとも、スプーン曲げるとか、コイン消すとか、そんな類とは全然違う。 正しくは『虹彩変色性特異能力保持者』…だったっけな。 長いから『瞳の色が変わる』ってんで普通はそう呼ばれる。安易なネーミングだけどよ。 それが何なのかって言えば、読んで字の如く、だ。 普段は普通の人間と何ら変わりねえが、瞳の色が変わると、超人的な力を得る」 「そんなの、初耳なんですけど」 少なくともリサは自分が軍にいた二年間、いや、今まで生きてきた二十一年間、そんな言葉は聞いたことがなかった。 「当たり前だ。その辺にごろごろしてたらこの国もお終いだ。 モノによっちゃ、完全武装した師団ぐらいじゃ止められんからな」 「…ひょっとして、そのCOLORSって、あっち側と、関係ありますか?」 山の方を指差す。グリードは思わずタバコを落としそうになる。 「…女の勘ってのは、つくづく恐ろしいもんだと思うぜ」 なんだか含みのある言葉だ。そうリサは思った。 「その通りだ。COLORSが確認されたのは二十一年前。 そしてそれが、カイルがどうしてこっちに来れたのかの答えでもある」 タバコを地面に落とし踏む。 そして新しいタバコに火をつける。 「あの地震の後、この国の奴らも何もしなかった訳じゃねぇ。陸路も駄目、水路も駄目。 そうなったらやることはひとつ、あの山脈のどてっ腹に穴開けるだけだ。 そうして三年かけて、唯一の通路であるトンネルを作った。 そしてすぐさま、救助が送られた。 そのときに保護された親子…両親に双子の姉妹。その双子の妹が、最初のCOLORSってわけだ」 途中、グリードが何かをためらった気がしたが、グリードは話を止めなかった。 「カイルも、その通路を通って、こっち側にきた。 …と言っても、そこにはまた七面倒くさいことがあるんだがなぁ…」 ぼりぼりと頭をかくグリード。 言うことがあり過ぎるのだろうか、非常に悩んでいるようだった。 「…とりあえず、その、COLORSって言うのについて、詳しく教えてくれませんか?」 「ああ…そんじゃ、リクエストにお答えするか。 さっきも言ったが、COLORSってのは、超常的な力のことだ。 簡単に言えば、素手で岩が割れるような腕力を得たり、どっかの民族並の桁外れた視力を持ったり、 視線を合わせただけで相手を催眠状態にできたりだとか…まぁ、人それぞれなんだがな。 単純に考えて、身体能力が常人と違いすぎるんだ。だから、銃持ったくらいじゃ相手にならねぇよ」 グリードの言葉を聞きながら、昼のことを思い出す。 「そういえば、今日会ったシェイドって人の目を見たとき、視界が真っ暗になったのも…そのせいなんですか?」 「あぁ、おそらくな。軍の資料にも少しあったんだが…ところでリサ、そいつの瞳は何色だった?」 昼間のことをよく思い出す。視界が消える寸前睨まれた瞳の色。 「確か、黒、だったと思います。」 「やっぱり、か。いや、こっちの話だ。ありがと」 グリードは懐から手帳を取り出し何かを書き、再びしまった。 「まぁ、一見無敵そうなその能力にも、色々欠点…副作用ってもんがある。 ある学者によると、COLORSってのは、『生存本能に依る闘争本能』。 あくまで人間のひとつの可能性、そういうもんらしい。 実際にはわからんが、最も有力なのは、極限状態に追い込まれた人間が何らかの脳内物質を 自発的に分泌できるようになり、その脳内物質で虹彩の色素が変化してるんじゃないか、っていう説だ。 だがな、普通の人間がそんなもん使いまくったらどうなるか、想像くらいつくだろう? ただでさえ体に無理させてんのに、脳内物質出まくりだぜ。体がイカれるのも、時間の問題だ。 そうなると、どうなるか。」 びしっ、とタバコをリサに向ける。 そしてその人差し指でこんこん、と自分のこめかみを叩く。 「脳がイカれ、心が壊れる。 そして、そこにあるものが残る。 『生存本能に依る闘争本能』ではなく、『闘争本能に依る破壊衝動』だ。」 グリードがタバコを吸い、煙を吐く音だけが辺りに響く。 「リサ、何となく察したか?俺らが『棺桶』にいるって言われる理由を」 「…はい、何となく。 つまり、普通の人じゃ相手にならないような人たちが、ここに雪崩れ込んできた。 それも、その中には数多く、殺人鬼が含まれていた。そういうことですね?」 「ああ。そんなところだ。 しかも、この『棺桶』には経験の薄い若え奴ばっか送られてきやがる。 そいつらにはわかんねぇんだよ。『ミイラ取りがミイラになる』ってのがな」 その言葉には、グリードのはっきりとした怒りが込められていた。 「…だがな、ひとつだけ、知っといてほしい」 先ほどとは打って変わって、淋しげな話し方だった。 「『COLORS』って、一区切りには、しないでくれや。 ちょっとばかし力を持ってるだけで、あとは普通の人と何ら変わんねぇんだから。 そこんとこ、よろしく頼む」 リサは言葉が出なかった。 またひとつ、普段見ることのできない仲間の内側を垣間見た気がした。 「ところでグリードさん。万一出会ってしまったときって、どうすればいいんですか?」 一瞬沈黙が流れた。 その後、グリードは顔を押さえてため息をついた。 哀愁が漂っていた彼から普段の彼に戻った。 「すまねぇ、肝心なとこ言い忘れてた。 要するに俺が言いたい、ここで生き残るために必要なことってのは、だ。 イカれたCOLORSに万一会っちまったら閃光弾(スタングレネード)でも投げて死ぬ気で逃げろ。 三十六計逃げるにしかず、ってな。 モノにもよるが、大抵イカれちまったら生命活動が停止するまで動くことを止めねぇだろうからな。 まともにやりあってたら命がいくつあっても足りねぇよ。 COLORSとやりあえるCOLORSじゃない人間なんて、俺はふたりしか知らねぇし…っ」 何かを言おうとしていたが、煙を吐いて話をきった。顔をしかめている。 タバコを落とし、今日何本目かわからないタバコに火をつけた。 「あんましこればっか話してても仕方ねぇな。他に何か、COLORSについてわかんねぇこと、あるか?」 うまく話をそらされた気がしたが、きっと『知らなくてもいいこと』と言うやつなのだろうと。 そこは名前で呼び合えるくらいの仲では踏み込んではいけない場所なのだろうと、リサはあきらめた。 「普通の人との見分け方とか、ありますか?」 「いや。さっきも言ったとおり、普段は普通の人間と何ら変わりねぇ。わかるのは瞳の色が変わるってことだけだ。 だから、自分からヤバイ奴に近づくような真似だけは、よしてくれよ」 「わかりました。…とりあえず、必要最低限なことは、わかったと思います。 質問したいことはまだまだありますけど…それこそ日が暮れそうなので。次の話に、移ってくれますか?」 リサの言う『次の話』とは、言うまでもなくカイルのことである。 「そう、か。…なぁリサ、人を殺すことは、悪か?」 突然の質問に、リサは答えることができなかった。 「殺された大切な人の復讐で相手を殺すのは、悪か? 刃物もって今にも自分の胸に突き立てようとする奴を持ってた銃で撃ち殺すのは、悪か? 同じ場面で大切な人を守ろうとして殺すのは、悪か? 飢えに苦しむときに食料を得るために人を」 「やめて下さい!」 リサは思わずさけんでしまった。そうしなければ、グリードはいくらでも続ける気がした。嫌だった。 「…悪いな、そういうつもりじゃなかったんだが」 タバコを地面に落とす。 グリードの足元には何本もの吸殻が転がっていた。 「タバコ、切れちまったな」 ふたりの間に沈黙が流れる。 「人は、時に生きるために他人の生を奪わなきゃならないときがある。 例え人がそれを悪だと言っても、だ。それを悪だと言う奴らでも、同じ立場に立てば、何も言えねぇさ。 あいつ…カイルは小さい頃の記憶がねぇ上に、気付けば十かそこらであの子らの小さい子たちの親代わりだぜ? 誰にも、甘えだとか、弱さだとか見せられねぇ所で、何年も過ごしたんだ。 立派だよ。とても年齢には合ってねぇ。 けどな、十八になったっつっても、まだまだ図体のでかいガキだ。 人を傷つけたり、殺したりすることを自分の中で『仕方ない』って思える程、大人じゃあない。 おそらくそうしなければ死ぬような状況であっても、だ」 グリードは大きくため息をつく。 「かわいそうなことに、その上COLORSまで持っちまってる。 言ったとおり、そいつは『生存本能に依る闘争本能』だ。 ある程度コントロールできるなら別だが、生命の危険を感じると無意識に反応しちまう。 カイルの場合はもっとひどいことに、激しい怒り・悲しみっていう激情でも反応しちまうんだ。 今のあいつは力に振り回されてる状態だ」 グリードは握った拳で座っていた岩を叩く。 「神様って奴がいるなら、一度その面拝んでみてぇぜ。 んで、聞いてみてぇ。どうしてアンタはCOLORSなんてもん作ったのか、ってな」 「グリードさんって、カイル君のお兄さんみたいですね。」 リサは、率直に自分の感想を述べた。 グリードは驚いたような顔でリサを見たが、へっ、と鼻で笑って沈んでいく夕日に視線を移した。 「…まぁ、付き合い、長ぇしな。弟みたいなもんだな。ダンナだって、きっとそう思ってるさ」 夕日が山に隠れ、先ほどの辺り一面を彩っていたオレンジ色が消えた。 グリードは車からランプとタバコを持ってきて、さっきと同じ場所に座った。 ランプの灯った場所だけ明るかった。タバコの火がきれいだと思えた。 「さて、雰囲気もそれっぽいし、そろそろ昔話を始めるとするか。 ホントはカイルの口から言うべきことなんだがな。 そのうち、俺の昔話もしてやるよ。その次は、リサの番だからな。」 「はい、約束します。」 リサは嬉しかった。仲間として、またひとつ認められた気がした。 「最初に言っとく。お願いだ。もしあいつが自分で話す気になったら、大人しく聞いてくれや。それと」 一旦言葉を切って煙を吐く。 「カイルはな、ちょいと不器用にできてるだけだ。話を聞いても嫌いにならないでやってくれ。 あいつがほしがってるのは同情だとか、哀れみじゃあない」 グリードは上を見た。リサも気になって視線を追う。そこには一番星があった。 「本当の自分を知っても、怖がらずに傍にいてくれる『仲間』ってやつだ」 その言葉を言ったグリードは、やはりカイルの兄のようだった。 「それじゃ、始めるか」 リサは心の中であの言葉をつぶやいた。
私は君の事、怖くなんかないから…
すっかり日が暮れた帰り道。 車に揺られながらリサは、ずっとカイルのことを考えていた。 グリードはカイルについてのことを知っている限り話してくれた。 それはカイル自身が話せることの全てではなかったが。 どうであれ、リサは裏口からカイルの内側に踏み込んだ気分だった。 「そんな落ちこまねぇでくれよ。俺が悪いことしたみてぇじゃねぇか」 「いえ、そんなこと…ないですから」 リサは悩んでいた。 果たして、いつも通り彼と接することができるのであろうか、と。 「まぁ、無理もねぇか。ここから先は、君の心の問題だ。俺にゃ、どうにもできねぇよ」 上の空が続いた。 だが、時間は待ってはくれなかった。 気が付けば、カイルが待っているであろう、部署に着いてしまった。 「ほい、着いたぜ」 ふたりがさっさと部屋に向かったが、リサは足取りが重かった。 後ろめたさというのは、ここまで肉体にも影響を及ぼすとは思わなかった。 部屋の扉ドアの前にふたりが立っていた。どうやらリサを待っていたらしい。 「さっさと開けろ、中尉」 リオンの声を聞いたのは何時間振りだろう。リサはそう思った。 午後四時過ぎに部署を出て、帰ってきた今は午後七時半ば。 約3時間半、実際にリオンは一言も喋らなかった。 「あー、腹減った。リサ、カイルを起こしてさっさと晩飯にしようぜ。 あいつは起こさなかったらきっと明日まで寝てるぜ」 ドアノブに手をかけたが回す勇気がない。 「そんなカッチコチに固まらなくてもよう。別に告白された次の日に会う男女じゃねぇんだから」 わかるようなわからないような例えだとリサは思ったが、なぜか顔が赤くなった。 大きく深呼吸をして思い切ってドアを開ける。 ガチャ 「カイルく…」 リサは足を止めた。後ろのふたりが中を覗き込む。 そこには誰もいなかった。カイルが寝ていたソファーの上にはきちんと畳まれたシーツがあり、その上に置手紙があった。
―大佐・大尉・アサダさん、勝手な行動をお許し下さい。 僕は、僕が受け入れられなかった過去に、ケリをつけてきます。 ひょっとしたら、僕は帰って来れないかもしれません。 もし、あの家の子どもたちがいなくなっても、探したりしないよう、お願いします。 帰ってこられたら、お詫びに夕食でもおごらせていただきます。 次に会うのは戦場になるかもしれませんが、 次の出会いのために、この言葉を言わせてもらいます。 さようなら カイル・クルセイド―
「今日は、もう帰れ」 置手紙の内容を読んで沈黙が流れた部屋で、その沈黙を破ったのはリオンだった。 「カイルを探すことは、俺が許さん。今日は大人しく寝ろ」 「ちょっと、ダンナ!カイルがあの女に勝てるとは思えない!そんなこと言ってる場合じゃ」 「あいつが決めたことだ。 人は時として、自分ひとりで乗り越えねばならんことがある。 ここであいつを止めれば、体に傷はつかんだろう。 だが、あいつの心の傷は消えるどころか、益々深くなる。わかるな?」 「『体の傷はいつか消えても、心の傷はそう簡単には消えない』…アネゴの受け売りですか、ダンナ」 グリードの目は、数時間前にリサを睨んだものと同じだった。 「もし行く、と言うなら…しばらく入院生活を送る覚悟はあるだろうな」 リオンもグリード以上の鋭い目つきになる。 今にもふたりはぶつかり合いそうだった。 「…やめて、下さい」 リサは恐怖のあまり声が震えていた。その声は気をつけなければ聞き逃してしまうほど、小さな声だった。 グリードはリオンからリサへと視線を移し、舌鳴らしをした。 「…わかりましたぜ、大佐殿。せいぜい神にでも祈ってますよ」 グリードは収まらない苛立ちをドアにぶつけ、部屋を去った。 乱暴に閉じられたドアがみしり、と悲鳴をあげた。 しばらくふたりともドアの方を眺めていたが、リオンが自分の席に歩いていって座った。 「中尉、お前も妙な気は起こすなよ」 「…はい」 リサはまだ体の震えが止まらなかった。 凄まじい殺気だった。目で捉えられそうなほど。 そして不安になった。 カイルも同じものを帯びるときがあるのか、と。 そしてそのとき、彼を見ても、怯えずにいられるのか、と。 とにかく早く宿舎に戻って寝たかった。 夕食は、あまり食べたくなかった。 せっせと荷物をまとめ、部屋を出る。 廊下を歩いていて、あるものに気が付いた。 自分のバッグに挟まれた、紙切れを。 それを仕掛けた主は紛れもなく、先ほど見た置手紙を書いたのと同じ主だった。
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